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2016年04月14日
スミレが見えた日、見えなくなった日
春に咲くスミレ。
恥ずかしながら一度も注目したことがありませんでした。
私「シイラ」は高知で新聞記者をしていますが、
先日、高知市にある高知県立牧野植物園の企画展
「すみれ・たんぽぽ展」(5月29日まで)を取材する機会に恵まれました。
パネルや標本で丁寧に解説されており、
愛好者でなくともスミレの世界の奥深さを感じることができました。
白い花、黄色い花をつけるものもありますが、オーソドックスなのは紫色。
紫といっても青が濃いものもあるし、紅紫色のものもあります。
もともと紫は好きな色の一つだったので、まずは花の色が気に入りました。
花の大きさは直径2センチほどと控えめ。
派手さを好まない自分の価値観にはぴったりでした。
それでもまとまって咲けば、可憐なスミレもそれなりに存在感を示します。
高知県では33種類ものスミレが見られると知り、驚きました。
植物園でスミレ、コスミレの2種類を見たのを手掛かりに、
我が家の近辺で探してみました。
厳密に言えば、見えるように、気付くようになったのです。
もう魔法のように草むらのあちこちに紫の「点」が見えだしました。
まるで「見たい」という眼鏡をかけたかのように。
せっかくなので、写真に収めようとカメラを持ち出しました。
撮影場所は我が家の愛犬の散歩コース。
花が小さいですから、しゃがみこんで撮りました。
それにしてもあるもんですね。ちょっとしたゲームのようでした。
これまで何度も、何シーズンも通った道なのにこの紫色に気付いたことがなかった…。
でも、その時は気付ける状況ではなかっただけ。後ろ向きには考えたくない。
それよりも、今気付いたことを幸せに思いたいものです。
だんだんと欲が出てきて「もっとまとまって咲いている所はないか」と探しましたが、
そんなに都合よく見つかるわけでもありません。
例の「見たい眼鏡」のパワーも落ちてきたなと感じたその時。
ありました。
「よく見つけたね」。
誰かの声が聞こえた気がしました。
実は年度替わりのバタバタでこのコラムの完成も時間がかかってしまいました。
そうこうするうちにスミレが見当たらなくなってしまいました。
身の回りの小さな宝物を見つけられるかどうかは
「ゆとり」のバロメーターなのだ、と実感した出来事でした。
名前:シイラ
職種:新聞記者
出身:神奈川県3人と黒柴1匹で、高知県で暮らしています。
長距離走と野球観戦が好きです。
白壁の建物、懐かしいユニフォームの野球カードを眺めるのが至福のひととき。