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2021年10月27日
日本の大切な文化である水引を、次世代にも残したい!
皆さん、こんにちは。
インターンシップ生の平良典子と申します。
私は日本文化、日本の伝統工芸が大好きです。
これまで、煎茶、書道、箏、水引と経験してきました。
今回、念願が叶い、大好きな水引について紹介できることになりました。
ご協力いただいたのは、長野県飯田市の株式会社神明堂の荒尾光宏さんです。
コロナ禍というのもあり、今回、オンラインで取材しました。
早速ですが、水引にどんな印象を持っているでしょうか。
水引の活動をしていると、水引って何?と意外と知らない方もいます。
日本の大事な文化である水引の魅力を、今回少しでも知っていただけたら幸いです。
そもそも、水引とは?
水引の歴史は古く飛鳥時代、隋(現在の中国)に渡った遣隋使小野妹子が帰朝の際、
帰途の無事を祈願して、献上品に紅白で染め分けをした麻ひもを結んで日本へ持ち帰ったのが
水引のはじまり、と考えられています。
その後、室町時代日本と明国との貿易(日明貿易)において、
貿易品に白と赤の縄が結び付けられておりました。
これは輸出品と輸入品を見分ける方法として活用していました。
これを当時の日本人がみて贈答品に赤白の縄を結びつけて送る習慣を文化としたと
言われております。
語源諸説としては、いくつも存在し紙縒り(こより)が元に戻らないように
糊水を引いて乾かし固めたことからとする説、紙縒り(こより)を着色水に浸して引きながら
色を染めたところからなどの諸説があります。【株式会社神明堂のホームページより引用】
【株式会社神明堂】https://shinmeido.jp/about/
飯田市では、300年前から作りはじめました。
マゲを結う為の紙紐である元結がはじまりです。
飯田には水引作りに必要な条件がいくつかそろっていました。
冬でも暖かく雨が少ない気候、和紙の原料となる楮や三椏が豊富であること、
天竜川の清流や風越山の湧き水など名水に恵まれていたことが挙げられます。
江戸時代に街道の要所として東西の文化が行き交い流通が盛んでした。
50年程前に大幅な需要増に伴ない機械化しました。
製作過程
では、その水引はどのように作られているのでしょうか。
工場の様子をご紹介いただきました。
水引工場7名、製品製造販売管理部門35名が工場で働いています。
水引は、パルプ(水引原紙)を撚糸することで作られます。
こちらの原材料は、珠の緒水引悠のいとのベンベルクです。
水引原紙を巻取り、ロールを紙テープの状態にしていきます。
紙テープの状態から、こより製造機によって、細い水引にしていきます。
この機械は自動で、ノズルを使って回転しています。
その後染色機で色づけされ、仕上げに入っていきます。
すべてのラインで最大90万本の水引ができます。
一日に作る水引は、箔巻水引90㎝で20万本、染分け水引60本で50万本です。
ボビンは、128個あります。
水引の機械は、小巻取り1台、スリッター1台、撚糸300本分、
(箔巻200本分)染分け仕上げ3台です。
合計10名で動かしています。
完成した水引は、検品仕分けを経て、皆さんの元に届きます。
全国各地に水引を販売しています。
また、熨斗袋や結納品や正月飾り等に加工して全国に販売しています。
株式会社神明堂の特徴
-水引原紙の撚糸から最終的な製品まで、一貫して行っているメーカーは、国内唯一です。
日本の長い文化の特徴として、
「陰陽」という相対する2つのもので世界が成り立つ考え方があります。
それは、赤白、金銀、黒白、黄白という、染分け水引に、その考え方が表れています。
正月飾り、熨斗袋でもこうした色をメインに作っています。
他にも、さまざまな種類の水引があります。
箔巻水引=色鮮やかなテトロンフィルムを巻付けた水引
絹巻水引=染色したレーヨン糸などを巻付けた水引
羽衣水引=テトロン箔に金銀糸を巻付けた水引
など、現在は80種類程製造しています。(荒尾さん)
今回、株式会社神明堂で新たに「珠の緒水引」が完成しました。
今までの祝儀用品、お正月用品の枠にとらわれない多彩な表現を可能とする多色展開と
水引を結ぶ人に向けての素材にこだわっています。
「珠の緒」発表会は、加賀水引の津田六佑先生、和工房包結の森田江里子先生、
有限会社ながさわ結納店の長澤宏美先生と共に、飯田市、京都、東京で行われました。
-珠の緒水引の完成までのお話、こだわりを教えてください。
-飯田の水引は、1672年から始まったとされています。
高度経済成長期を経て、需要の高まりを受け、低価格競争になっていました。
これまでは、いかに安く作るかを考えていました。
しかし、これから安いものではなく、良いものを作らなければと思っています。
良いものを作らなくてはという想いで、今回、珠の緒水引を先生方と考えました。
先生方からは、世の中にない水引が欲しい、見たことのない色が欲しい、というご意見をいただき、
色を開発していきました。
青がラインナップとして少なかったこと、
黒は今まで仏の色としてあまり必要とされていなかったので少なかったことを踏まえ、
今回、ダーク系のバリエーションを多くそろえてみました。
また、淡い色が欲しいという声から、淡い色も開発しました。(荒尾さん)
実際に、私も7月の展覧会に伺いました。
珠の緒水引は本当に色のバリエーションが多く、微妙な色の違いを楽しめました。
水引が大好きな私にとっては、夢のような世界でした。
素材はかたくしっかりとしていて、水引の芯の強さを感じました。
先生方によって、水引の魅力の伝わり方が異なり、とても面白かったです。
人によって表情が変わる水引には魅力があります。
水引の現状
-現在も加工賃の安いベトナムの工場で水引を使った製品を作っています。
海外で作っても、素材は日本のものです。
このような現状ではありますが、日本での生産力を高めたい、
技術を伝承していきたいという想いがあり、水引細工の技術継承に力を入れています。
例えば、こちらは、職人技の一品です。(荒尾さん)
【水引飾り 松竹梅】https://shinmeido.jp/lineup/
水引の魅力
-水引の魅力や水引への想いを教えてください。
-同じ水引を使っても、使い方によって、結ぶ人によっても魅力が変わってくることだと思います。
水引を好きでいてくれる人に必要とされたいです。
やわらかい方がよい、かたい方がよいなど、使う人に対してモノづくりをしていければと思います。
(荒尾さん)
水引のコロナ禍
-コロナ禍、何か変化はありましたか。
-コロナ禍、結婚式が少ないので、打撃を受けています。
水引は、対面するコミュニケーションがないと、成立しないことも多いです。
しかし、結納は両家で行える儀式でもあることから、需要があります。
年末は、正月飾りで忙しくなります。
スーパーのお正月コーナーに私たちの水引も並んでいます。
ぜひ、ご覧ください。
コロナ禍、巣籠需要が高まり、水引に興味を持ってくれる方が増えました。
水引飾りはじめてセットは好調です。
主婦の友社から出版されている書籍で、付録の水引を弊社が請け負っております。
(http://shufunotomo.hondana.jp/book/b375398.html)
水引をやりたいと思ってくれて、嬉しいです。(荒尾さん)
水引の未来
-水引の技術の継承については、どのようにお考えでしょうか。
-水引の職人の開発を長野県飯田市下伊那郡で行っています。
イベント等を開催すると、地元飯田市下伊那郡の方は、知っているようで知らなかったという声、
地味であまり興味を感じなかったけど、考え方が変わったという声、がありました。
水引をやりたいという意識に少しでもつながればと思います。
20年前、内職屋さんに支えられていました。
現在、高齢化してしまい、技術の継承が課題です。
内職の方が高齢化している影響で、中には、
この商品はこのおばあちゃんしか作ることができないというものもあります。
社内には、技術部門があり、その技術を図面に残しています。
2027年にリニア中央新幹線が開通するので、観光資源として、水引も盛り上がってきています。
習いたいという人たちも増えてきました。
水引は、今何となく可愛いと興味を持ってくれる方が多いです。
次の世代には、そうしたこともそうですが、水引がこれまでどのように日本に関わっていて、
どう使ってきたのか、今後どのように関わっていくのか、
伝えていけたらと思っています。(荒尾さん)
水引への想い
取材中、20代の若い方が水引に興味を持ってくれて嬉しいと笑顔でお話くださった荒尾さん。
20代の頃、荒尾さんは入社し、これまで水引に関わってきました。
水引への愛をとても感じた取材でした。
コロナ禍で実際に伺うことができませんでしたが、コロナが明けたら、伺いたいと思っております。
コロナ禍、私の心を癒してくれているのは、水引です。
とても感謝しています。
編み方や、光の当たり方によっても様々な表情を魅せてくれる繊細で美しい水引。
水引のこれまでについて、水引と日本について、改めて、深く知ることができた取材でした。
今回、水引について少しでも、知っていただけたら幸いです。
もう、編みたくなってきた頃ではないでしょうか。
絹巻水引から始めるのがおすすめです。
ぜひ、試してみてください。
日本の大切な文化である水引を、次世代にも残していきたいです。
水引工芸 (株)神明堂
所在地:〒395-0804 長野県飯田市鼎名古熊2325
公式HP:https://shinmeido.jp/
名前:平良典子
職種:学生
出身:東京都日本文化や伝統工芸が大好きな大学4年生。
趣味は水引を編むこと、書道、箏を弾くこと。
写真は水引を編んだもの。