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2019年03月27日

変幻自在な内山紙 後編

飯山市の伝統的工芸品である内山紙の伝統工芸士、阿部一義さんの工房では、
内山紙を学びたい、好きだから勉強したいと様々な想いを持った人たちが一義さんのもとに学びに来ています。

今回はその方たちにお話しをお聞きしました。

 

埼玉から通う、天野さん

 

 

―通われてどのくらいになりますか?

5年ぐらいになりますかねぇ。

―5年も?!なぜ一義さんの工房で内山紙を学ぼうと思ったんですか?

長野県の自然に惹かれて埼玉から通っています。
もともと和紙が好きで、和紙研究会にも入っていて、埼玉でも和紙の勉強はしていたんです。

―和紙作りの魅力って何ですか?

まず手漉きと機械だと全然風合いが変わってくるのが面白いんです。
紙漉きも楽しいですが、楮という原料から仕立てる作業が、大変ですけど好きなんです。

―それは体験してみないと分からない魅力ですね。

そうですね、何か良さを伝えたいと思った時に、実際に体験したことを伝えるのと
聞いたことだけを伝えるのでは熱量が全然変わってくると思うんです。

 

内山紙に詳しいという方と現実的なお話

 

今は後継者不足っていうのがどこ行ってもあるから大変だね。

―後継者不足の1番の理由ってなんでしょうか。

やっぱりこれだけでは収入が安定しないっていうのが理由だね。
県が後継者を見つけるサポートをしてたり、いろんな取り組みをしてるんだけど難しい問題だよね。

―収入の安定というと、どんな取り組みができるでしょう。

一番は売れるようにすることだと思うよ。
例えばきちんと販売する販路を確定させてあげること。
そしてどういう商品をつくってどうやって売るかを考えることだね。

―どういう商品をというと?

今は障子のある家も減って、和紙を使う人が減ってしまっているから、
今の人に和紙を使ったどういう商品を作ればよいのか考える必要があるんだよね。

例えば、生活の中で使ってもらえるっていうのが大事だから、
昔のままの世界観や価値観じゃなくて、新しい人を取り入れたり、デザイナーをつけたり、
今の人にも使ってもらえるものっていう商品を考える必要があるよね。

―後継者を見つけるにはその仕事で生活できることが大事ということでしょうか。

生活できることも大事だ。でも伝統に興味のある若い人って、とにかく好きだからやりたい!
って人が多くて、そういう気持ちからやってみるっていうのも大事だと思う。

 
 

お二人の話を聞いて、もともと興味があったり、地元であったり、
内山紙に関わる理由は人によってさまざまであるけれど、
関わるきっかけがあることは素敵なことだなぁと思いました。

内山紙の魅力、地元の伝統的工芸品、知らないなんてもったいない。
日本の大事な伝統は多くの人に知ってほしい、触れてほしい。
まだ存在を知らなかったり、興味を示すきっかけがない現代人に、
昔のままだけでない、新しい方法でアプローチしていくことが必要だなと感じました。

 

内山紙を乾かす体験!

 

 

鉄板に濡れた和紙を貼って、上から刷毛で空気を抜きます。
簡単そうに見えて結構難しい。

横から一義さんや皆さんに、
「もっと力入れて!」「端の方全然空気ぬけてないよ!」
など熱いアドバイスをいただきながら頑張りました。

刷毛をかけた部分がピシッとするのがとても楽しい。
乾いた後鉄板からシュパッと和紙をはがすのも癖になります。

少しよれてしまいましたが初めてにしては良い出来だとほめていただき、
とても嬉しい!

体験してみて感じたのは、やっぱり人から話を聞くだけじゃなくて、
実際に体験しないと分からない面白さがあるということです。
自分自身で感じることが、これ好き!に繋がるということ。

実際に触ることで水の冷たさや作業の難しさ、大変の中にあるやりがいや楽しさなど、
自分にしか分からない好き!のポイントを発見でき、好きのポイントを沢山見つけることで、
今後も関わっていきたい!という気持ちになるんじゃないかな~?っと思ったりしました。

 

手作り卒業証書?!

 

 

一義さんの工房では、小学生に紙漉きを体験してもらい、
卒業証書を自分の手で作るという取り組みをしています。

自分でつくった卒業証書はきっとすごく特別に感じるんだろうなぁ…と羨ましく感じます。
内山紙の手漉きの風合いは、大人になってから卒業証書を見返した時に、
一義さんの工房で体験した時の気持ちを思い出す、味わい深いものになる、
とても素敵な取り組みだと思いました。

このような小学生の頃から地元の伝統的工芸品を体験したり、
何らかの形で触れてもらうことが、伝統をつないでいく大切なことだと感じます。

また、伝統を受け継ぎつつも新しい価値観を取り入れて、
今の人やこの先の人、多くの人に使ってもらう。

例えば、障子のある家が減っているので、
洋風な家にも置けるような、おしゃれなインテリア雑貨。
内山紙の高い品質と風合いを生かしてファッションに取り入れるなど、
内山紙という変幻自在な上質な素材を、今の人たちの生活や日常に溶け込ませることが、
古い伝統という考えから今も人々の生活に寄り添う伝統に繋がると思います。

内山紙をつくる職人だけでなく、
内山紙を使って作品を作る人を増やすことが大事なのではないかと考えます。

そして、内山紙が好き!と思うファンが沢山増えたら嬉しい♪

私の地元にも伝統的工芸品はあるのだろうか。考えたこともなかったけれど、
もっと自分の地元を知りたいと思えるきっかけになりました。

一義さん、お話をして下さった皆さん、貴重な経験をさせていただきありがとうございました!

 

名前:柏原彩里
職種:ふたりごと文庫編集部
出身:神奈川県

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