現在募集中!伝統工芸の後継者インターンシップ一覧 インターンシップや求人情報等を配信中!

ふたりごと文庫 みんなの「”あの人”に知ってほしい!」をつなぐオンラインマガジン

みんなの「”あの人”に知ってほしい!」をつなぐオンラインマガジン

> ふたりごと文庫一覧

2016年07月27日

気づき、気づかせる努力

こんにちは!てしねこです。

そういえば、セミが鳴いている。
気がついたのは日曜日のことでした。

朝自宅を出て、せかせかと早歩きをして地下鉄に潜り、
駅に到着しても地下からそのままオフィスへと登っていく生活。

なんだかんだ気が張っているのでしょうか?
いつもは、
大通りを行き交う車と人の声しか聞こえないのに、
いつもよりのんびり起きた週末の朝、
久しく聞いていなかったセミの声に気づきました。

清々しく夏本番を予告するセミに、
「忙しいふりしてないで、もっとアンテナを張りなさい」
と言われているようでした。

そんな今日この頃、
佐賀で出会った木彫刻師さんの話を思い出しました。
重要無形文化財に指定されている、
郷土芸能「面浮立(めんぶりゅう)」に欠かせない
お面「浮立面(ふりゅうめん」をつくる職人さんです。

image.00_28_18_13.Still002

面浮立とは、
五穀豊穣や奉納神事など祈りを捧げる時に行う民芸。
9月に入ると佐賀県七浦地区中心に各地で盛んに行われます。
職人さんが住む鹿島市も代表的な地域ですが、
時代が流れるにつれて、
その数は減少傾向にあるのです。

Still001

「このまま伝統を途絶えさせたくない。
もっと面浮立を知ってほしい」

work.00_09_53_07.Still001

職人さんは取材でそうつぶやきました。

ただ願うだけではなく、
まずは地元の子供たちに語りかけようと思い、
小学校に訪問する活動をはじめたそうです。

子供たちに伝えるのは難しく、はじめは苦労の連続。
それでも、子供と接する中で話し方を変化させて、
とあるもので子供たちの心をつかみます。

浮立面は「鬼」がモチーフとなっていますが、
昔話にも出てくるこの鬼とはなんだろう?

IMG_4047

そう問いかけると、
子供たちは色々な質問をしたり、
鬼について知ろうと興味津々だそうです。

「鬼は自分の心なんだよ。
人の悪口を言ったり、病気になってしまったり、
自分にとって良くない部分が鬼なんだ。
だから、その鬼を良い鬼にして、
これから来る悪いことを追い払う強い心にするんだよ」

それを聞いてハッとしました。
不作、病気、邪念… 自分にとって都合の悪い部分は鬼であり、
その鬼を良い方向へ変えていく。
それを浮立面にというお面に例え、
世の中の改善を祈り踊るのかもしれません。
僕自身の中にスッとそのことが入ってきた。
きっと子供たちも同じ気持ちだろう。
そう思いました。

職人さんは最後に、
子供たち自身に鬼が心であると実感させます。
その方法は鬼の絵を「鉛筆で描く」こと。

「頭に角があって牙がはえている鬼。
大きくても小さくても、
怒っていても笑っていても、
消しゴムで角と牙を消せば人になる。
また角と牙を書けば鬼になる。
誰かをいじめたり、悪口を言ったら鬼になるよ!」

そう言って笑いながら授業をする。
ただ、伝統や歴史を教えるのではなく、
心に残る伝えかた。
色々なことに気づき、気づかせることが、
人間ならではの教え方なんだと思いました。

「そういえば、あのお面の鬼にのこと、
どこかのおじさんが教えてくれたな。」

いつか、故郷のことを懐かしく思って、
またあの踊りが見たいと思う人がいるかもしれません。

その誰かのために、今日も伝統を守る人がいる。

てしねこ

映像で、心躍る“社会科見学”を! 子どもたちに職人の手仕事の素晴らしさを届けたい

 

img_bun_cf

https://a-port.asahi.com/projects/nippon-teshigoto/

只今、ニッポン手仕事図鑑では支援を募っています!
みなさまの温かいご支援をお待ちしております。

ニッポン手仕事図鑑カメラマン てしねこ

名前:てしねこ
職種:撮影、編集、一応チーフ
出身:埼玉県川口市

くだものが好き。りんごなら紅玉。
自由奔放な学生生活から、急遽の映像の世界に飛び込む。
父親と映画を見て育ったという経緯はとくに関係無い。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
NEW CONTENT

ニッポン手仕事図鑑公式ツイッター

ニッポン手仕事図鑑公式Instagram