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2019年03月27日

変幻自在な内山紙 前編

長野県の北端に、飯山市があります。

自然豊かで豪雪地域である飯山市は、冬になるとあたり一面白銀の世界が広がります。
平成27年には北陸新幹線が開通し、全国各地からのアクセスがとても便利になりました。

そんな飯山市には沢山降る雪を生かした伝統的工芸品、“内山紙”という和紙があります。

今回私は内山紙を作る職人、阿部一義さんの工房へおじゃまし、
内山紙づくりの体験と工房の見学をさせていただきながら、
内山紙についてのお話を聞かせていただきました。

それにしても、工房に行くまでの景色が素晴らしい!

 

白く雪化粧した山々に、高く降り積った雪。
雪を見慣れていない私にはとても幻想的で息を飲むような景色でした。
空気も綺麗で美味しい!

 

内山紙とは…

 

工房に到着。
一義さんよろしくお願いします。

 

まず見せてもらったのは内山紙を作る大きな機械!


 

ぐるぐると巻かれていく出来立てほやほやの内山紙は、ほのかに暖かいのです。


 

ガションガションという音と共に、とろとろとした水から内山紙が出来上がる
この一連の様子を1日中ぼーっと横でながめていたい…。

一義さんが内山紙が完成するまでの工程を教えてくれました。

これが原料となる楮という植物です。


 

この楮の黒皮を雪の上に並べて雪にさらします。
これが内山紙をつくる特徴的な工程、“雪さらし”と言います。

この“雪さらし”を行うことで、太陽の紫外線と雪の水分からオゾンが発生し、
楮が漂白され綺麗な白い内山紙となります。


 

雪の多く降る土地だからこそ生まれた技法であり、雪にそんな力があるとは…驚きです。

原料になる楮を栽培し、皮を剥ぎ、雪さらしを行い…
和紙になるまでなんて時間と手間暇がかかる作業なのでしょう。

 

手漉き体験!

 

 

楮とのりの入った冷たい水はとろとろと気持ちがよく、この水が和紙になるのかと不思議な気分。

水中の楮を沢山すくいあげ、縦横にふりふり…
一義さんのサポートもあり完成!
今回はハガキサイズのものをつくらせていただきました。


 

手漉きしか体験していないのに自分で作ったオリジナルの山内紙に感動し、
伝統的工芸品の内山紙を体験できた喜びで興奮しました。楽しい!

 

紙という概念を超えた衝撃の作品たち

 

一義さんが内山紙でつくった作品を見せてくれました。

ランプは和紙の切り込み方、形、透かし方のデザインによって周りの雰囲気を変化させ、
和紙を通して伝わる光は温かみのある柔らかな光になります。


 

デザイナーの方がつくられた作品もありました。
シンプルなものから見た目のかわいらしいものまで数多くあり、
1つ家に置いただけでおしゃれな空間になること間違いなしです。

次にみせてくれた作品はなんと木彫りの置物?


 

に見えますが、じつは和紙でできているのです!
型となるものに和紙を貼り重ねるとできるそう。

どこから見ても木彫りの風合いを出しているその置物ですが、
和紙でできているので持ってみるととっても軽く、見た目とのギャップが面白い。

工房の中を見渡してみると、
木彫りでできているような壁飾りやお面がいくつも置いてありました。


 

もちろんこれもすべて和紙。完全に騙されました!
ほかにも鉄でできているような、和紙でできた壺があり、
木の風合いだけでなく鉄のような風合いも出せる和紙に衝撃を覚えました。

一義さんの息子さん、阿部拓也さんが、今作っている作品をみせてくれました。
なんと和紙でできたクラッチバッグ!


 

おしゃれすぎます。まだ開発段階だとおっしゃっていましたが、完成するのが楽しみです!
内山紙でできたバッグは使っていくうちに徐々に手になじむ柔らかさになっていき、
より風合いが出てきます。丈夫で長持ちもするため、大切な人にプレゼントするにも最適です!

まだまだ作品あります!
内山紙でつくった鞄、クッション、服、ネクタイ。
え、これ本当に和紙で作ったの?という驚きの品々が次から次へと出てきました。


 

鞄は可愛らしくしっかりとした質感で多少重いものでも十分入りそうです。


 

クッションは驚きの柔らかさ、
もっとゴワゴワしているかと思ったのに予想外のさわり心地。
これは実際に触っていただきたい!

服を着させてもらいましたが、着ると暖かく、やはり柔らかな質感で着心地は最高、
ネクタイも使えば使うほど味わいが出る内山紙でできているので、
こだわりの強い人や長く大事に使いたい人など絶対に欲しい人がいるはず!

この品々、なんと一義さんのお母さんがつくられたものなのだとか。
一義さんのお母さんの時から、内山紙を障子紙など紙としての機能でなく、
日用雑貨やファッションに取り入れるアイデアを出して、実際に形にしていたことに驚きです。

そして、今も綺麗に作品が残っているのは、丈夫で長持ちする内山紙だからこそだと感じました。

 

内山紙にふれて

 

和紙と聞くと障子紙や書道の紙など、紙としての機能しかイメージができませんでしたが、
今回内山紙を教えていただく中で、和紙というのは上質な素材であって、
その素材をどういうように加工するのかは自由なのだと、紙という概念が消えました。

それは、内山紙のような丈夫で長持ちし、
日焼けしにくい品質の良さがなければなかなかできないと思います。

楮や雪などの自然の力を借りながら職人の手で手間暇かけてつくられた1枚。
内山紙でできたものは絶対に大切に使いたいと思える一品になるはず。

短い時間でしたが、内山紙が大好きになりました。

内山紙の可能性をもっといろいろな方に知っていただきたい!
内山紙を使った素敵な作品が沢山生まれれば素敵だなと思います。

 

名前:柏原彩里
職種:ふたりごと文庫編集部
出身:神奈川県

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