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2019年03月26日
雪の世界の内山紙 前編
今回、内山紙について知るために、長野県飯山市へ。
北陸新幹線が通る飯山市は、スキー場や温泉などが魅力です。
冬になるとスキーや温泉を目当てにやってくる観光客がたくさんいます。
現代的な綺麗な飯山駅から少し離れると、真っ白な雪の世界が広がります。
都会で育った私にとってはこの大量の雪が、とても眩しく非常に魅力的に映りました。
多くの地域には伝統工芸品が存在します。
しかし、一つとして同じものなんてありません。
例えば、同じ和紙でも工程は異なり、触感が違うものもあれば、用途の向き不向きもあります。
このように、同じものを作る地域があっても、その場所独自の魅力は必ずあります。
今回訪れた飯山市の伝統工芸である内山紙は、雪ざらしと呼ばれる工程によって
非常にきれいな白を発色し、原材料ある楮からは薄くて丈夫なかみとなっております。
内山紙を作る工房「阿部製紙」
訪れたのは、千曲川の近くに工房を構える「阿部製紙」さんへ。
古来から日本の和紙作りの原料となってきた楮(コウゾ)
というクワ科の植物を100%原料に使います。
「雪さらし」という工程を行う内山紙は、綺麗な白の漂白と、驚くほどの丈夫さ、
また紫外線への強さを得ます。
そのため、書道紙や障子に使われることが多く、国内でも最高級の品質を誇ります。
今回私は、阿部製紙さんを取材させていただく事になりました。
最初に出迎えていただいたのは、
有限会社 阿部製紙の代表取締役である阿部一義さんと、
伝統工芸士である息子さんの阿部拓也さんでした。
(温かく見守る阿部一義さん)
工房見学
工房内を見学しながらいろいろな機械と紙の説明をしていただきました。
現在は手すきだけではなく、機械を使った生産もしています。
大きな部屋に広がる機械たちは、やる気にみちた声を出しながら紙を作っています。
和紙の作成工程は、まず原料の採取、加工から始まり、すき、圧搾、乾燥を経て完成となります。
さて、ここの写真の工程は何だと思いますか?
工程の途中にあるこの機械、これがちょうど「手すき」のところだそうです。
この工程を超えると一気に私たちが知るような和紙に近づいていきます。
そして最後に、水蒸気が立ち上るこの大きな機械に一枚一枚が貼り付けられます。
高温になった鉄のローラーに薄く伸びると、和紙はたちまち脱水され、熱せられます。
そして、一回転した向こう側には、出来立てほやほやの和紙が。
手に取って触ってみると、人肌より少し高い温度の、優しい温かさを感じます。
機械で作る工程も、回りながら見ていると人の手で
やっていることの形が変わったものだと実感することができます。
しかし、機械でできた和紙は非常に均一できれいなのですが、
やはり手すきで作られた紙の方が心地のいいさわり心地や温かさを感じました。
それを手でやってしまう職人さんも、延々と稼働し続ける機械もどちらもすごいものです。
黙々と稼働し続ける機械の錆が、長年職人さんとともに頑張ってきたのを感じさせました。
後編へ続く
名前:中川太智
職種:ふたりごと文庫編集部
出身:神奈川県