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2016年06月29日
藍染工房 壺草苑
藍染工房 壺草苑の職人さんに会うため、
東京の青梅へ行きました。
壺草苑さんは、江戸時代の藍染を再現するため、
自然の中で生まれた原料「すくも」を使用しています。
科学薬品は一切使わない。
蓼藍(たであい)という植物の葉を乾燥、
発酵させた「すくも」という原料から天然藍をつくり、
一枚一枚を染め上げていくのです。
一年という時間、労を惜しまずつくられるこのすくもが、
江戸時代本来の手法を守る藍染職人のすべてとなっています。
この原料をつくる職人を藍師とよびます。
徳島にたった5人だけ。
この藍師によって、
私たちが普段口にする、醤油、味噌、酒などと同じように、
根気よく愛情を注がれた原料が、
壺草苑さんのもとへ届きます。
厳選された灰とふすま(小麦の外皮)が藍染職人の手で加えられ、
天然藍灰汁発酵建(てんねんあいあくはっこうだて)
という嘘偽りのない天然藍がつくられるのです。
そうして建てた藍もまた生きている。
具合も悪くなるし、調子がいいときもある。
建ててすぐ、死んでしまうこともある。
だから、毎日声を聞いて、面倒をみる。
想像以上に、藍染職人の仕事は繊細だということを初めて知った。
現在この手法での藍染は、たった数パーセント。
ここ3年の間で、原料の生産は約3割が減少しています。
ですが、藍染のブームは拡大し、生産者は増え続けるているという
矛盾が生じている現状。
ケミカルな方法でなら、たった数分で完成してしまう藍色の布。
薬品を濃くすれば、より鮮やかで見た目もキャッチーな商品が出来る。
何よりも安価。
それが、良いか悪いかは消費者の考え次第ですが、
壺草苑さんの藍染は、
リサイクルなどという言葉が存在しない時代の手法であり、
すべてが体にやさしく、
合理的であるということに目を向けたいと思いました。
薪で火を焚き、燻製をつくる職人がいて、
そこで出た灰を藍染職人が使って天然藍をつくる。
役目を終えた藍が肥料となり、植物を育て土に還る。
そして、人のもとへと帰ってくる。
最後にはっとしたのは、
染物屋の工房なのに床や壁がほとんど汚れていないこと。
使っている道具も昔のまま。
天然とはそういうことか。
薬品はこびりつく、こびりついた薬品をまた、
薬品で落とす。
それが現代の当たり前。
リサイクルなどしなくても、自然に還るもの。
先人たちがしていたことは、命のサイクルに則っているのだと、
考えさせらえる日でした。
てしねこ
名前:てしねこ
職種:撮影、編集、一応チーフ
出身:埼玉県川口市くだものが好き。りんごなら紅玉。
自由奔放な学生生活から、急遽の映像の世界に飛び込む。
父親と映画を見て育ったという経緯はとくに関係無い。