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2019年04月11日
内に秘めた、東伊豆への思い | 荒武優希
「最近のマイブーム?
うーん、そうだなあ。
最近はよく近くの温泉に行ってるかな。
温泉がたくさんあって、本当に心が安らぐよ。
あと、実はこの辺おいしいコーヒー屋さんも多いんだ。
エスプレッソが好きなんだよねー。
散歩とかもするよ。
ここは景色も素敵だからね。」
一見、とっても穏やかなこの方こそ、今回私がインタビューさせていただいた、荒武優希さん。
荒武さんは東伊豆・稲取の地域おこし協力隊(2019年3月に任期終了)と、「都市とローカルをつなぎ、暮らしたいまちと暮らす社会をデザインする」をモットーに活動するNPO法人ローカルデザインネットワークの副代表理事として、稲取に拠点を置き、日々アクティブに活動しています。
私たちも荒武さんと一緒に稲取を散策させていただきました。
「この辺は魅力的な空き家も多いし、近々町イベントもするから、いろんな構想をしながら町を歩くんだよ。」
稲取は吊るし飾りの発祥地であり、1/20-3/31雛のつるし飾りまつりが催され、毎年多くの観光客が町に集まります。
そのタイミングで今年は、荒武さんの三年間の地域おこし協力隊としての集大成とも言うべきイベント「雛フェス」が開催されました。町の数多くの空き店舗を改修してシャッターを開けて多くの人に見てもらったそうです。
「改修した空き家に借り手がついたり、その建物に少しでも興味を持ってもらえるといいな。
元々漁師町で住宅が密集していて、活用されていない空き家もたくさんある。
でもそれって、素材が沢山あるっていうことだから、空き家の改修による町おこしのポテンシャルはすごく高いよね。」
イベントの企画は荒武さんを中心に、町の人の協力を得て行っています。
稲取に来て3年程、荒武さん自身も空き家に住んでいました。
「当時は普通に空き家で一人暮らししてたんだけどさ、なんだか、前に住んでたおばあさんの仏様がまだその家にいたまんまだったらしくて。
あの時おれは一人じゃなかったんだなーって、あとでわかったんだよね。」
そう明るく話す荒武さん。
ちょっと背筋がヒヤッとするような話ですが、そんなエピソードがあるのも空き家に暮らすことの魅力なのかもしれません。
ごちゃ混ぜで心地良い、稲取での暮らし
横浜で生まれ育った荒武さんにとって、東伊豆での生活は不便に感じないのでしょうか?
「そりゃあ少なからず感じるけど、電車は30分に一本は走っているし、町に学校もあるし、観光地としても栄えているから、最低限暮らすのに支障はないかな。
ここでの生活は居心地も良いよ。」
町を歩いていても、スーパーに行っても、温泉でも、大体顔見知りで、声をかけてくれる人がいることが、まるでジブリ映画のワンシーンのようで、横浜にいたときの憧れだったといいます。
「今の自分の東伊豆でのポジションって、本当にいいとこ取りなんだよね。
どっぷり地元に根付いているわけじゃないから居心地悪さとかしがらみもないし、町長とも旅館の経営者さんともフラットに話せて、近所のおじいちゃん、小学生、旅館の新入社員として移住してきた若い子なんかともしがらみなく付き合えるし。」
ローカルどっぷりの居心地悪さを感じずに東伊豆に定住する魅力を享受でき、東伊豆での仕事も、プライベートとの境無く、ごちゃ混ぜな感覚が気楽で居心地がよいとのこと。
地元稲取でいきいき暮らすこととは
現在荒武さんは、“この町で働くことの本当の良さ”を町の若者に伝えるべく、奮闘しています。
進学、就職等の理由で都会に出た若者のUターンのケースが少ない稲取。
その理由は、働き口の選択肢の幅と、観光業に対する若者のイメージにあるといいます。
稲取の主産業は観光で、仕事の選択肢も観光業の占める割合が高くなっています。
しかし、新規で観光業に就職するのは町外出身の若者たちが中心で地元出身者は少なく地元の主産業への関心はそこまで高くありません。
「観光にたずさわっていないひともこの町に携わって協力した先に、この町の明るい未来があるのだと思っているよ。
だから、今自分がそれを手助けしたい。
イベントもっと規模を拡大していきたいし、より多くの町の人を巻き込んでいきたい。
こういうことって、自分自身がよそ者だったからできることだと思うんだ。
よそ者の自分が言い出したから、みんな協力してくれている。」
また荒武さんは、自分がイベントを企画しスタッフを募集することで働く選択肢を増やし、地元で自分らしく生きるための提案をしていきたいとも考えています。
「この稲取の景色って、本当に綺麗でしょ。
この町を作ってきた地元の人たちにすごく尊敬している。
通りすがりの観光客にもフレンドリーに道を教えたり、町民同士が思いやりあって生活しているところも、魅力的な場所だと思うよ。
そんな町の人たちが自分のイベントの手伝いだったりを協力してくれて支えてくれるのが本当にうれしい。」
いきいきと語る荒武さん。
稲取への愛情がひしひしと伝わってきました。
小さな一歩が産んだ、大きなトキメキ
そんな荒武さんが地域おこし協力隊に入り、空き家の改修を始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
「俺大学三年生のとき、とにかく何かしたいけど何やればいいかわからない大学生だったんだよね。(笑)
そんなときに友達に長野の空き家回収の手伝いを誘われて行ってみて、それが今の活動の原点かな。
長野に行ったときに田舎での暮らしに魅力を感じて、感覚的にいいなと思って、そこからいろんなことに踏み出せるようになった。」
「やっぱり、最初の一歩をふみだすことが大事だと思う。それからいろんな地方のプロジェクトにかかわって、そして最終的に東伊豆に引っ越してきた。
直感でビビッと来たものには前のめりになってすぐ動いちゃうんだよね。
本当はゆったりとスローライフをおくってもいいなと思って東伊豆に来たけど、気付いたら思ってたより忙しくアクティブに動いてるな(笑)」
「そういう直感でビビッとくるものを探す作業がたのしいんだ。
その中で助けてくれる人もいっぱいいてさ。
今も探している最中なのかもしれない。」
大学時代の荒武さんのように、これからなにかしたい!と思っている若者に対してアドバイスをいただきました。
「考えすぎてるひとが多いけどさ、まず規模が小さいことでもアクションを起こすことが大事だと思うよ。
小さいことでも、自分ができることなんでもいいからアクションを起こす。
自分の中で小さな挑戦をしていく中で、きっとなにか見えてくる。
そして、チャンスをつかめ!って言いたいな。」
最初は直感と勢いでも、結果として今、荒武さんが楽しくいきいきと稲取で暮らしていることこそ、その行動力の賜物だったのだと私は思います。
私自身、地元福島県いわき市から去年の春に都内に引っ越してきたばかりで、田舎と都会のギャップに驚くことがしばしばあり、逆に都会から東伊豆に移住した荒武さんのお話は、とても興味深く感じました。
特に、その地でどう自分らしく、生き生きと暮らすかというお話はとても心に響きました。
荒武さん、貴重なお話をありがとうございました。
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【NPO法人ローカルデザインネットワーク】
【ダイロクキッチン】
【空き家改修プロジェクト】
Photo by 小黒恵太朗