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2020年09月24日

ふるさとに帰るという選択肢

初めまして、こんにちは。熊本市在住の池田真麻(いけだまあさ)と申します。
現在32歳、今は熊本市役所内にある「熊本市UIJターンサポートデスク」で移住支援員として働いています。

熊本の風景画像1

今回、“ふたりごと文庫”さんに寄稿させていただくこととなり、とても嬉しく思っています。何を書こうかなと迷ったのですが、今回は私自身のUターンについてのお話を交えながら、これから地元や地方に移住したい、もしくは関わりたいと思っている方へ、私からメッセージをお届けできればと思っています。

地元で歳をとっていきたい

まずは私のことを少しお話しますね。
元々は熊本県北の田舎町の出身なのですが、田舎の狭いコミュニティが苦手で、幼少期からあまり地元が好きではありませんでした。高校卒業後、親を説得して神奈川の大学に進学。それから約12年間東京近郊で暮らし、一昨年2018年5月に熊本へUターンしました。

熊本の風景画像2

好きではなかった地元になんで帰ったの?と思う人もいらっしゃるかもしれません。
私の場合は、「地元で歳をとっていきたいと思ったから」です。

音楽の勉強のために東京の大学に進学したものの、卒業後、音楽ひとつで身を立てることができず、また親にも心配をかけていたので、どうしても東京に残りたかった私はアパレル会社に就職。
親の反対をなんとか説得して上京したこともあったし、何も成し遂げないまま地元に帰るわけにはいかないような、何か意地のような気持ちもあったかもしれません。もちろん、東京の方が仲のいい友だちも多かったし、当時の私に「熊本に帰る」という選択肢は全くありませんでした。

でも、ある日電車に揺られながら思ったんです。定年退職するまで、この満員の電車に毎日乗らないといけないのかな、とか、おばあちゃんになってもこの電車に乗り続けるのかな、とか。

熊本の風景画像3

私が東京から熊本に帰省していたあるとき、すごくハッとさせられた出来事がありました。
熊本のとある駅で電車を降り、ホームから改札階に行く途中、人が二人ギリギリ並んで通れるかな、というくらいの狭い階段の一番前を、杖をついたおばあちゃんがゆっくり降りていました。その後ろにたくさん人が並んでいて、なかなか先に進みません。東京のエスカレーターだったら、たまに舌打ちする人とか、イライラを露わにしてしまう人もいますよね。(もちろん、そういう人ばかりではないと知っているし、そうしてしまう気持ちも理解できます。)
でも、ここでは会社員らしき人も、高校生も、子どもとそのお母さんも、みんなでおばあちゃんの歩調に合わせて階段を下りている。その穏やかな光景に、「みんな温かいな、こっちが良いな」と思ったんです。

自分の子どもの頃を振り返ると、確かに地元のコミュニティは苦手だったけれど、みんなで食卓を囲んで、母が作ってくれたごはんを食べて。自分でごはんを作ることの鬱陶しさを知った今、母のごはんの有難さといったらありませんよね。一人で食べるごはんより、誰かと食べるごはんの方が絶対に美味しいことも、一人暮らしを経た今では身に染みて感じています。

食卓の画像

いつも家族や祖父・祖母、親戚、近所のおじちゃん・おばちゃんが可愛がってくれて、誰かが自分のことを気にかけてくれていて。その当時はそれが幸せだと気づけなかったけど、今になって振り返ればなんて幸せで、温かくて、有難いことだったのだろうと。

そう思えたときに、やっぱり自分は熊本で歳をとっていきたいな、熊本で家族をつくって、熊本に根をはって暮らしていきたいなと、思うようになりました。

「帰っておいで」と言ってくれる人がいるところ

とはいえ、素直に「熊本に帰ろう!」と決めることはできませんでした。元々熊本が好きではないと言って出てきたし、東京に仲のいい友だちもたくさんいて、なんだかんだと東京の暮らしも気に入っていたし、離れがたい気持ちも大きかったのです。

でも本能的に、何か熊本と関わりを持ちたい、何か関わりがあれば、前向きにUターンを決意できるきっかけになるかも、と思い、熊本に関わることのできる仕事への転職を決意。そこで見つけたのが「NPO法人ふるさと回帰支援センター」の熊本県専属移住相談員というお仕事でした。

ふるさと回帰支援センターの画像

ふるさと回帰支援センターは、東京・有楽町駅の「東京交通会館」に入っている施設で、全国各地の専属移住相談員さんに直接相談をすることができます。毎週末移住セミナーが開催されていたり、全国各地の移住に関するパンフレットも揃っているので、移住を検討している人にはぜひ一度足を運んでいただきたい場所です。

ここでのお仕事を通して、熊本県内のいろんな市町村の職員さんや実際に移住した方と知り合うことができました。みなさんとコミュニケーションをとる中で、幼い頃には分からなかった熊本の魅力や、地元の方々の熊本への想いを知ることができ、「私も何か役に立てれば」と移住相談員の仕事にのめり込んでいきました。

また、仲良くなった方々から、「池田さん、いつ熊本に帰ってくると?」「早く帰って来んね!」と言われると、いよいよ帰りたい気持ちが強くなってきて、みんながいるなら早く帰りたいなって思えるようになったんです。

宴会での集合写真

これまでたくさんの方の移住を見届けてきましたが、個人的に移住先を決めるうえで大切なことは、「そこに会いたいと思う人がいるか」だと思っています。もちろん住環境や行政の支援制度なども大切だとは思うのですが、どこに移住しても自分ひとりでは暮らしていけません。何か困ったときや悩んだときに、力になってくれる人や気軽に相談できる人がいるかどうかはとても大切だし、そうでなくても、せっかく移住したなら飲み友だちの一人や二人、欲しくないですか?(笑)移住したらこの人とごはん食べよう!って頭に思い描く人がいる方が、移住も楽しみになると思うし、安心できると思うんです。

私の場合もまさにそれで、私に「帰っておいで」と言ってくれる人たちのおかげでUターンが決断できました。今度は私自身が、「池田さんがいるから熊本に行こう」って思ってもらえるような人になれたらと思っています。

本来の自分に戻っていく感覚

2018年の5月、私は熊本へUターンしました。
翌年の4月からご縁あって熊本市UIJターンサポートデスクの移住支援員として働くことになり、熊本市役所で毎日、移住希望者さんからご相談を受けたり、メールやお電話でサポートを行ったりしています。

熊本市は繁華街の中心に熊本城という立派なお城があるのですが、小さいころから慣れ親しんだこのお城を通勤時に毎日見ていると、「あぁ、本当に帰ってきたんだなぁ」と、嬉しさと安堵感でしみじみと満たされた気持ちになります。東京にいた頃はあまり出てなかった熊本弁も少しずつ戻ってきて(笑)。本来の自分に戻っていくような、不思議な感覚もあります。

熊本の風景画像4

実家からは車で約50分くらい離れていますが、定期的に私が実家に帰ったり、逆に母が私の家に遊びに来たりしています。台風が来たり、大雨で警報が出る時などは実家の家族が私の家に避難してきたりもします。何かあればすぐに助け合える距離にいられることが、Uターンしてきて本当に良かったなぁと思えることのひとつです。

東京に仲の良い友だちが多かったので、彼らと離れることはUターンするうえで本当に寂しいことではあったのですが、いまはLINEやSNSなどでいつでも東京の友だちとも連絡が取れるので、完全に関係が途切れてしまったということはありません。最近は、ふるさと回帰支援センター時代の同僚が子どもを授かったという嬉しいニュースもあって、何か熊本らしいお祝いが送れないかなと考えているところです。

また、私と同じようにUターンしてきた方や移住してきた方と定期的に飲み会を開くようになり、その中で友だちも増えました。最近はコロナ禍でなかなか飲み会は開けませんが、私の友人の移住者さんと移住希望者さんを交えたオンライン飲みもやっています。移住してもしなくても、こうして人と人とのご縁が広がっていったらいいなと思っています。

集合写真

まずは誰かに話してみることから

最近はコロナ禍で、行きたいところに気軽に行けなくなってしまいました。地元にもなかなか帰れないという方も多いかもしれません。私自身、去年は仕事で頻繁に東京に行けていたのですが、コロナが広まってからは全く熊本から出れておらず、県外の友人にも全く会えていません。

となると、やっぱり行けるときに行った方が良いし、会えるときに会っておいた方が良いなって、つくづく思うんです。

熊本の風景画像5

今はコロナのせいで行動は制限されるかもしれないけれど、最近はネットで相談したり情報収集したりが当たり前の世の中。いつかコロナが落ち着いたとき、すぐ動けるように、今は自分の気持ちや想いを整理してみてください。
そのために私みたいな移住相談員がいるし、友だちやパートナー、家族でも良いと思います。まずは話すことから始めてみませんか。

みなさんの思い描く人生が実現できますように、いつも応援しています。

池田真麻

名前:池田真麻
職種:熊本市UIJターンサポートデスク 移住支援員
出身:熊本県和水町

熊本市へ移住したい方々のサポートをしています。熊本市でなくても、なんとなく移住に興味がある方、熊本に行ってみたいなという方も、ぜひ気軽に連絡してくださいね!

▷熊本市公式移住情報サイト「熊本はどう?」
https://kumamotodo.jp/

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