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2020年09月15日

このままではコロナに京都の伝統産業が負けてしまいます

5月半ば、「このままではコロナに京都の伝統産業が負けてしまいます」というメッセージが放たれました。

このメッセージを発信したのは、save our crafts by MIYABIというオンラインショッピングサイト。京都の工芸品を販売するオンラインショップ「京もの専門店みやび」が、特設サイトとして開設したものです。

伝統文化保護に積極的に取り組んでいるイメージのある京都から真っ先にSOSのメッセージが発信されるとは思ってもいなかった私は、このメッセージに衝撃を受けました。

京都の伝統産業はどのような状況にあるのか?そしてどうしてこのサイトを立ち上げたのか?サイトの運営者である吉澤さんと、サイトの開設に関わり、サイト上で商品の販売もされている中村ローソクの田川さんにお話を伺いました。

今回は京都伝統産業ミュージアムにて、インタビューをさせてもらうことができました。

ところで、この京都伝統産業ミュージアムもコロナの影響を受けた施設だそう。今年リニューアルオープンしたものの、タイミング悪く観光客が激減し、来場者も少なくなっているのだとか。しかし京都市の伝統産業74品目が一堂に会するミュージアムの展示内容は圧巻で、とても無料の施設とは思えない充実ぶりです。

伝統産業に興味がある人もない人も楽しめる工夫がなされていたので、京都を訪れた際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

先が見えない不安

さて、終息の兆しが見えない状況の中、インタビューは自然と暗い話題が多くなりました。
「店を開けているだけでもしんどいですからね。固定費がかかる。いつ終わるのかがわかっていれば対策も立てられるけど、誰もわかっていない状況やから…。収入が減った。たくさんの人に来てほしい。でも人は集めるなと言われる。どうせえっちゅう話でしょ」
田川さんの営む中村ローソクでは商品の売り上げが減少したことに加え修学旅行の見学プログラムなどが軒並み中止となったことで、売り上げは半分以下に落ち込んでいるそうです。
店を閉じる職人さんも少なからずいて、これからも増えていくだろうと田川さんは嘆きます。

「経済が元に戻ったとしても、これまでのブランクを取り戻すには数年はかかる」とも話す田川さん。
よく考えれば当たり前のことです。しかし、なんとなく「経済が回復すればいまの窮状も解消するのだろう」と楽観視していた私にとっては衝撃的な一言でした。

特に、ものづくりの産業は材料を仕入れて商品を作るのが先で、収入が入ってくるのは後になります。突然商品を売りづらい状況になったことで支出だけが膨らみ、収入に対する不安が特に高まっているのだそうです。

伝統断絶への危機感

今の状況が続くと、何が起こってしまうのでしょうか。お二人は揃って、伝統が途絶えてしまうことへの危機感を口にしました。

「伝統産業が今まで続いてきたのは、世の中に必要とされているから。実は伝統工芸品って高級品よりも、日用品の方が多いんですよ。でも今は必要な産業さえ続けるのが難しくなっている。」
「根の技術が無くなってしまうと、それを取り戻すのは村おこしと同じくらい難しい。だから根の技術を残していく必要があるんです」(田川さん)

「伝統工芸っていうと土産物のイメージがあると思うけど、実は寺社仏閣の修復などにも需要があるんです。このまま職人さんが減っていくと、修復できるんかな…今が耐え時ですね」(吉澤さん)

吉澤さんのお話は盲点でした。普段伝統工芸品を使わない方も、神社やお寺に行くことは少なくないはず。伝統産業の危機は、意外なところで多くの方の生活にも影響するかもしれないのです。

「儲けることが目的ではない」

そんな状況のなか、田川さんはオンラインショップの開設を考えます。

「こういうサイトをいつまでも続けたいと思っているわけではないですよ。でもそうでもしないとやっていけない状況なんです」
「こういうことは真っ先にやらないと注目も集まらないから、なるべく早く始めたかった。吉澤さんたちのような若手がGW中も作業してまとめてくれた」(田川さん)

サイトには、「このままではコロナに京都の伝統産業が負けてしまいます」のメッセージや職人さんの動画など、他のサイトにはない「伝える」ための工夫が随所に見受けられます。

「取り組みとしては、ただのショッピングサイトじゃなくてインタビューを入れたりとか、とにかく頑張っている職人さんがいることを知ってもらうのが先決やなと。もちろん売れるに越したことはないけど、儲けることを目的にしているわけではないんです」(吉澤さん)

確かに、MIYABIでは商品が4割引きで販売されています。割引販売を目にすることの少ない伝統工芸品で、これほどの割引率は衝撃的です。お二人はこう語ります。

「最初は半額にしよう、なんて話もあったんですよ。ただ、計画していたGW中は、まだまだ状況を楽観視している人も多かった。いまは当時より状況が悪いから、同じことをやったら半額でも参加する人は沢山出てくるでしょうね。ただ勘違いしてほしくないのは、これは安売りをしているというわけではないんです」(吉澤さん)
「B級品とかではなくて、定価以上の良いものをここまで割引いている。思い切った値下げをすることで『こんなモノがあったんだ』と手に取ってもらうきっかけにもなるし、それだけ現場が困っているんだ、ということを知ってもらえれば」(田川さん)

MIYABIで販売されている商品は、今春に販売を予定していた商品や催事に出展できなかったものなど、どれも良品ばかり。普段あまり見かけない商品もあり、見ているだけでも楽しめます。

良いものへの投資

最後に、田川さんはこう語ってくれました。
「コロナウイルスの影響を受けてかわいそうだから買う、というのではなくてお客さんが本当に良いと思ったものを買ってほしい。いらんものまで買う必要はないから、良いものへの投資として私たちの商品を買ってもらいたいです」(田川さん)

save our crafts by MIYABIは8月末を目途に運営を終了する予定で、今後の計画については検討中とのことです。
家にいる時間が長い今だからこそ、普段の日用品にこだわることの価値が高まっていると思います。このサイトはもちろん、この機会にお住いの地域の職人さんにも目を向けてみるのはいかがでしょうか?もしかするといままで気が付かなかったような発見があるかもしれませんよ。

save our crafts by MIYABI:https://www.miyabi-satellite.com/
京都伝統産業ミュージアム公式サイト:https://kmtc.jp/

甲斐玲音

名前:甲斐玲音
職種:学生
出身:千葉県

工芸品が好きな大学3年生。
ものづくり自体も好きで、趣味はレザークラフト。

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