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2018年08月06日

地方や伝統工芸の世界で、なぜデザインが必要なのか―石井挙之

職人魂に心を揺さぶられ、隣にいる誰かに伝えたくなる。
そんな職人の生き様を仕立てる「仕立屋と職人」さんの

個性豊かな4名の方々にリレー形式で登場してもらいます!

前回の第一弾ではワタナベユカリさんが登場。
ユカリさんの人柄がすごく伝わってくる、素敵な記事を書いてくれました。

第二弾は、デザイン、ストーリーテリング担当の石井挙之さんです!お願いします!!

(photo by Tomohisa Kawase)

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note 仕立屋の日記

 

第一走者のスタートダッシュが速すぎた上に、

バトンを落としてったようなので拾っていきます。

第二走者は、仕立屋と職人で装飾を担当しております石井です。
ここ滋賀県長浜市から、全国津々浦々行ったり来たりしながら
職人たちと話を重ね、デザインの仕事(とたまに釣り)に明け暮れています。

 

さて、ここまではワタナベが
パトス8、仕立屋2のバランスで
どんなことをやっているのかをご紹介してきました。

今回せっかくこうした機会をいただいているので、
僕はこの記事をこれから就職していく学生さんや、
働きながらも何かソワソワしている人たち
あぁこういうやり方もあるんだなぁ、
と頭の片隅で覚えてもらえたらいいな、
と思って書きます。

あわよくば、一緒にやっていきましょう。
滋賀に来てみたらパーっとするかもしれませんよ!

 

さて、仕立屋と職人の装飾担当として、
地方や伝統工芸の世界で、なぜデザインが必要なのか
僕の体験をまじえながら書いていこうと思います。

第二走者は第三走者に無事バトンを渡すことが大事!

*本文ではデザインという言葉を多用しますが、当記事においては
グラフィックデザインを思い浮かべていただけると幸いです。

photo by Kenya Morioka

はじめて地方でデザインをする、という可能性を知る。〜石井の場合〜

 

ビルボード、パッケージデザイン、テレビCM、キャンペーン。
街に溢れるデザインはスケールも大きくてかなり刺激的。

営業、プロモーション、マーケター、マネージャー、
ディレクター、フォトグラファー、そしてデザイナー。
一体どこからどこまで何人が関わっているんだ……?

まるで霧のように広がるチーム編成も、
自分がその一部だと思えば、妙な興奮感。

デザイン会社勤めの頃、僕は東京のオフィスで昼も夜も
PCのモニターに向かって、そんなことを思っていました。

興奮感の反面、擦り切れた脳ミソはもう何のために作ってるのやら
そんなことを考える余地もありませんでした。

 

ある日、原体験になる転機が訪れました。
「今、スーパーの跡地に住んでるから遊びにこいよ。」

廃墟……?
当時働いていた会社の先輩が、
退社をして妙なことをはじめたのです。

「町おこし」
この時初めてこの言葉を知りました。

 

早速訪ねてみると、駅員いない。コンビニない。車走ってない。
シンとした町の中に古民家が一軒。
同世代の若者が数名、東京から集まってタコ焼きを焼いていました。

はじめて地方でデザインをする、という可能性を知る。〜TOKYO VS LOCAL スケールのちがい〜

 

そこは千葉県にある1000人強の小さな港町でした。
この夜をキッカケに、人が人を呼び、
少しずつ人が出入りをするような町になりました。

やがて大所帯になったそのプロジェクトの中で
僕はデザインを担当させてもらっていました。
それは普段会社でやっているデザインの仕事より、
“人”に接近している感覚がありました。

 

東京でのお仕事は、
予算の規模や関わるプロジェクトメンバーの数、
リリースされた時のメディアの取り上げ方など、
スケールが大きくなる代わりに、
“届ける人”が見えづらいと思う時もありました。

では、ローカルでやるデザインのスケールが小さいか?
というとそうでもないと感じたのです。

 

一つ目の理由は、自分がカバーしなければならない範囲が大幅に増えたこと。

二つ目に、予算のケタは違うが手がけたものが世に出た時の
クライアントや町の人の反応がダイレクトに返ってくること

責任も増えるが、できることも増える。
これはデザイナー1人に対して見た時に、
かなりダイナミックなスケールじゃないか、
と思ったのです。

眠っているものを掘り出し、伝えるデザイン。
デザイナーの役割を探す生活。横断的に行き来する働き方。

ピタッとくるやり方を模索するため、
会社を辞め、東京を離れました。

 

 

はじめて地方でデザインをする、という可能性を知る。〜脱・広告市場の苦労〜

 

と、息巻いたものの、そうスンナリはいきません。

おいおい、偉そうに言ってるなぁ。と。
僕ならそう思います。
そんなうまくいくかよ、と。
いざやってみると、立ちはだかる壁の連続です。

 

まず、依頼主の伝えたいもの見つけ出すまでめっちゃ時間かかる。
依頼書やブリーフシートのようなものなんて
基本的に見たことありません。僕だけでしょうか。

何が課題で、誰がターゲットユーザーで、伝えたいことはこれで……
とお上から流れてきていたあの白い紙は一般的ではない!幻だ。

と知りました。
 

正確には、それまでの案件には、
課題発見に時間をかけて、あらゆる手法を駆使して
整理して要項をつくるプロフェッショナルがいたんだな、
と気が付きました。

そう、課題は用意されていたのです。

 

「アレ、解決したい課題から探していかないと、絵ツクレナクナイ?」
この行程をすっ飛ばすと、空振りデザインが豪快に空を切ることになります。

むしろ空振ってるデザイン(や製品)は、
この行程がおろそかになっている、とも言えます。

実際にPC開いて、グラフィックツールつかってデザインして……
という時間は全体の20%以下になりました。
残りの80%は対話と整理です。


 

大半の場合は、
何が課題なのかもハッキリしていないもんです
漠然としたモヤモヤをずっと抱えて、
そのモヤモヤが言葉にならないから、
モヤモヤしたままデザイン頼んだら
モヤっとしたデザイン上がって来た。

焦らないでください。と言いたくなります。
モヤモヤが晴れないうちは、納得いく絵なんて描けません。

そうなる前に、
モヤモヤの正体を暴かないといけないのですが、

これは客観的視点がないとできません。
つまり、えこひいきなしに、今までの経緯など知らずに、
忖度なしに、ズバッと物事を切り取れる(時には切り捨てる)
立場にいないといけません。

 

用意された課題に対して絵をこしらえることが
デザインではありません。
何に悩んでるのか、モヤモヤに名前をつけるところから
デザインの作業は始まります。


 
 

仕立屋と職人 〜デザインと伝統工芸〜

 

ここでようやく仕立屋と職人の話になります。
仕立屋と職人は4名のチームです。

第一走者のワタナベはモノづくりを。(縫子)
第二走者の石井はデザインを。(装飾)
この後登場する古澤はプロデュースを。(参謀)
そしてラストの堀出は販路開拓を。(運屋)

 

これまで書いてきたプロセスはあくまでデザインの範囲ですが、
リサーチはみんなでやります。
リサーチはそれぞれの得意な分野で深めていけば、
たいていは網羅できるからです。

伝統工芸は時に300年を超える歴史を持ちます。
歴史も深ければ、課題もだいぶ根深いです。
その中に失ってはいけないDNAが編み込まれています。

 

製品を一つつくるにも、カッコいい、売れそう、
という感覚は無視できませんが、
失ってはいけないDNAをどうアップデートするか、
が勝負になってきます。


 

こだわりを押し付けてしまっては、
消費者に伝わらなくなってしまう。

時に歴史的背景よりも、
カッコイイ、カワイイという感性が
フックになる。

ものが良くても私生活にマッチしなければ、
伝統工芸品が活躍できる場が限られる。

主観的になりがちなところを
客観的になって伝えていく。

隠さず言いますが、
これらは、仕立屋と職人もいつもブツかる壁です。
相当難しいです。

①課題と伝えたいことを見つけ出す
②言葉に表し指標にする
③伝えるためにアイテムをつくる
④職人のメッセージを翻訳してアイテムに乗せる

装飾担当と言えど、縫子から運屋までの守備範囲を
横断的に考えて動きます。他の3人も同じです。

 

だからこそ、誰かが主観的になりすぎている時は、
他のメンバーが客観的意見を与えることができるのです。

photo by Masayo Takenaka
 

東京のみの生活から離れ、
ピタッとくる働き方を探してるうちに
横断的なチームのあり方にたどり着きました。
なんとなくですが、こうした横断的な思考の動き方は
これからもっと必要になる場面が増える気がしています。

なぜ、地方や伝統工芸の世界でデザインが必要か。
それは、客観的に情報を捉えて、
伝わるように翻訳しなければならないから、
だと思っています。

 

これが、仕立屋と職人・装飾のお仕事です。
なんと気づいたらデザインしてるっぽい写真が
一枚もありませんでした……。

一応、グラフィックデザインを仕事としておりますので、
おヒマがあれば覗いていただけると幸いです。

コチラ

 

さて、次はこの仕立屋と職人をまとめ上げる、
参謀・古澤恵太の登場です!

名前:石井挙之
職種:仕立屋と職人 装飾, グラフィックデザイナー
出身:千葉県

全国津々浦々、スナフキンのように移動するデザイナー。
仕立屋と職人・現場部隊兼装飾担当。
 
photo by Arif Wahid

仕立屋と職人

職人魂に心を揺さぶられ、隣にいる誰かに伝えたくなる。そんな職人の生き様を仕立てるのが、仕立屋と職人の仕事。
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note 仕立屋の日記

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ふたりごと文庫編集長 浅野有希

ふたりごと文庫編集長 浅野 有希
産業能率大学4年生。
大学2年生の時、ニッポン手仕事図鑑のインターン生として参加し、
2周年感謝イベントや期間限定ショップのスタッフとして活動する。
現在は「日本の地方の魅力を伝える仕事」に就くため、日々猛勉強中!

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