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2019年03月27日

雪の中の和紙工房 内山紙の魅力編

東京駅から北陸新幹線で二時間。

 

工房に向かうと風景は変わり、雪解け水の屋根からこぼれる音だけが響く銀世界。

ここ長野県飯山市で江戸時代初期から受け継がれる伝統工芸こそ、内山紙です。

 

私が内山紙職人の阿部一義さんの工房にお邪魔させていただくと丁度、
職人さんとその見習いさんが柔らかく湿った和紙を、
特注のレトロな機械で乾かしているところでした。

 

 
数十枚か重なって寝かされた和紙を一枚ずつめくって機械の上にはらりと優しく置き、
乾かしながら手際よく刷毛で強く撫でてしわをのばしていきます。

 

静かな工房に、刷毛の音だけが響いていました。
私もこの工程を体験させていただきましたが、
絶妙な力加減がとても難しく、完成品はしわだらけでした。

 

工房の皆さんはそれをそつなくこなし、完成品にはしわひとつ、
ムラひとつありません。

その手つきと皆さんの真剣なまなざしに、
内山紙に対する敬意と強い愛情を感じました。

地元に帰って、日本の伝統工芸に携わりたいと思ったから。
飯山の風土が好きだから。

見習の皆さんが工房に入ったきっかけは様々でしたが、お話を聞けば聞くほど、
内山紙に本当に愛情を持っているのが伝わってきました。

中には、埼玉から毎週末通っているという方も。

手間がかかること
それが内山紙の魅力であると、見習いの天野さんは言います。

 

阿部さんの工房では、和紙の材料となるコウゾの木を育てるところ
から和紙として製品にするまですべての工程を行っています。

“雪さらし”といって雪の上にコウゾの枝を並べて漂白する、雪国ならではの工程もあり、
私たちの知る和紙の形になるまでは、本当に気が遠くなる作業です。

その長い道のりを経てやっと完成した和紙を見た時の達成感こそが、
内山紙製作の魅力だそうです。

私も工房にお邪魔してはじめて、手すきの和紙が職人さんたちの手で作られる現場を
目の当たりにし、皆さんの和紙に対する思いに触れると、
ラッピングされて道の駅の店頭に並ぶ和紙が全く違うものに見えてきました。

そちらでは内山紙製の懐紙を二束購入しましたが、
人の手で漉かれた紙からは何とも言えない暖かみが伝わってきます。

そしてこの懐紙、強く引っ張ってもなかなか破れないんです!

手すきの和紙は、障子紙としても使われるくらいに頑丈です。

白くて美しく、更に丈夫でやぶけにくい。

雪さらしなどの間のかかる作業段階をふみ、
職人さんが長い時間をかけて生み出した内山紙の魅力です。

後半では、その内山紙と伝統工芸全般の現状と課題について、
紹介させていただきます。

 

名前:柳葉優有
職種:ふたりごと文庫編集部
出身:福島県

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