現在募集中!伝統工芸の後継者インターンシップ一覧 インターンシップや求人情報等を配信中!

ふたりごと文庫 みんなの「”あの人”に知ってほしい!」をつなぐオンラインマガジン

みんなの「”あの人”に知ってほしい!」をつなぐオンラインマガジン

> ふたりごと文庫一覧

2017年08月23日

【連載】かよいみち ―1.新潟県長岡市和島

「田舎の学校の校歌って、山や自然をやたらと讃えているよな」

今年度の始めくらいだっただろうか。
そんなツイートを目にして、思わず笑ってしまったことがある。
微笑と言うよりは、自虐気味の冷笑だ。

「弥彦国上の気高い山を共に仰いで」

そんな風に小学校の校歌で歌われた
僕の地元は、新潟県の和島村というところである。

正確には「村だった」と表現するのが正しい。
2006年の市町村合併で長岡市に編入されたため、
今はその地区名を残すのみとなっている。

 

 

 

先日、お盆の時に、久しぶりに和島に帰省をした。
車通勤での運動不足を解消するため、当時の通学路を歩いてみたが、
10年ぶりに辿ったその道は、僕が知っているそれとは少し違っていた。

 

 

 

道中、随分前に廃校になった母校の小学校を改めて目の当たりにした。

伸び放題になっている草は、残酷な程に時間の経過を感じさせる。

「こんなに小さな校舎だっただろうか」

そう感じてしまったのは、僕の背丈が伸びたせいだけではないのだろう。

 

 

 

和島の人口は、現在約4,000人。
僕が住んでいた頃よりも、1,000人近く減少している。

時間帯や時期のせいもあったのかもしれないが、
交差点にも、路地にも、4km近く歩いて到着した中学校にも、
人影はほとんどなかった。

故郷がこのように変化をしていくことに、
おこがましくも一抹の寂しさを感じ、帰路についた。

しかし、変化は悪いものばかりではない。

 

 

 

村内には創立100年を超える
もう1校の小学校が存在していた。

僕の母校と同じく廃校になってしまったが、
築85年の木造校舎はリノベーションされ、
現在はレストランやパン屋、セレクトショップ等として活用されている。

「和島トゥー・ル・モンド」と名付けられたその場所には、
県外からも観光客が訪れているらしい。

 

 

 

人口は、確かに減少している。
その中でも、新しい風が吹き込み始めている。

 

 

 

小中学生時代の15年間を過ごした和島のことを、
当時の僕は正直あまり好きではなかった、と思っている。

コンビニは1軒しかなく、
遊ぶところもほとんど無い。

高校進学に伴って華やかな市街に出られた時はとても嬉しかったし、
関西の大学に進学が決まった時は尚更だった。

人や物、情報に溢れた生活を、かつては意味もなく渇望していたのだ。
隣の芝生は青く見えてしまうものなのである。

 

帰路の途中、和島唯一の小学校に立ち寄った。
廃校となった小学校が統合され、2009年に新設された校舎だ。

 

 

 

入り口の近くには、良寛様のオブジェが設置されていた。
江戸時代末期の禅僧である良寛様は、この和島の地で晩年を過ごしたとされている。

かつて校歌の3番でも、「良寛様の高い御徳を心に刻み」と歌われていた。
優しく、欲がなく、諸民に愛された良寛様の姿と教えは、
現在も確かに息づいているようである。

 

 

 

校門を出たところで、自転車を漕ぐ中学生と偶然すれ違った。
深々とヘルメットを被るその姿に、当時の自分を重ねて見た。

本当に、自分は和島が嫌だったのだろうか。

クラスの仲間と馬鹿をやるのは楽しかった。
テストで良い点を取るのは嬉しかった。

和島という世界が、日常のほとんど全てだった当時、
不満に思うことはほとんどなかった。

ただ、高校という少し広い世界を知ってしまったから、
市街という便利さに慣れてしまったから、和島を窮屈に思うようになっただけの話である。

大きく変わってしまったのは、和島ではなく、
僕の捉え方だった。

結局、この「満たされない感」はどこに行っても同じなのかもしれない。

自分が通う大学より偏差値の高いところに嫉妬したり、
給料や知名度が高い会社に憧れを抱いたり。

上を目指すことは大切だが、
今の自分を肯定してあげるのは、
自分自身にしかできない。

子どもの時は、どこだって、なんだって楽しむことができていたのだから、
環境に言い訳ばかりしてしまうのは、ちょっと勿体無い。

 

 

故郷は少しずつ変わっていく。
僕も割と変わってしまったのかもしれない。
ただ、久しぶりに訪れた和島は、
緑と青空が綺麗な、夏が似合う場所だと、
そんな風に思った。

===

なんてことが、先日ありました。

初めまして、小黒恵太朗と申します。
新潟育ち、関西経由で、新潟にUターン就職をしました。

写真と、文房具選びと、ラーメンが大好きです。

この「ふたりごと文庫」さんでは、
「かよいみち」というタイトルで連載をさせていただきます。

毎日通っていた道でも、改めて歩き直してみると、新しい気付きに出会うもの。

今回は小中時代の通学路だったので、次回は高校時代、
その次は今の通勤ルートにしようかな、
などと妄想しております。

どこに着地するのか、僕としてもまだまだ未知の領域ですし、

それはさておき、記事を通して読者の皆さんと少しでも心通わせることができたら良いな、
と思っています。

これからどうぞよろしくお願いします。

 

小黒さんの次の記事はこちら!「かよいみち ―2.新潟県長岡市」

 

名前:小黒 恵太朗
職種:会社員
出身:新潟県

新潟移住計画や、写真ユニット「てんてこまい」としても活動中。
丁寧な暮らしを心がけています。
Facebookアカウント:https://www.facebook.com/keitaro.oguro
instagramアカウント:https://www.instagram.com/dekunobou365/?hl=ja
Twitterアカウント:https://twitter.com/dekunobou365

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
NEW CONTENT

ニッポン手仕事図鑑公式ツイッター

ニッポン手仕事図鑑公式Instagram